RX100は白飛びしやすい

一般的に、センサーのサイズが大きければ大きいほどダイナミックレンジ面では有利です。RX100の数少ない欠点のうちの一つが、そのダイナミックレンジがちょっと狭いこと。

 

 

ダイナミックレンジというのは、例えばCDの場合、どれくらい小さな音からどれくらい大きな音まで記録できるのか、再現できるのかが決まっていますよね。あまりに大きな音は潰れます。小さな音はノイズに埋もれます。

写真のダイナミックレンジはどれだけ暗いところからどれだけ明るいところまで記録する事が出来るか、その幅を指します。写真の場合はEV(Exposure Value=露出値)で、ビデオの場合はdBで表すんでしたっけね。

実際に外へ出て自分の目で景色を見てみると、明るいところから暗いところまで人間の目は上手く補正してしまうので、明るさの差がそんなにあるようには見えません。
でもカメラにとっては輝度差が大きいものって結構苦手なんですよ。21世紀に至ってもある程度の暗いところからある程度の明るいところまでしか一度に撮る事はできません。その幅が、センサーの大きなカメラほど広く撮れます。コンデジやスマホみたいに載っているセンサーが小さなカメラは不利。すぐ白飛び、黒つぶれします。

そういえばHDR(High Dynamic Range)という技術もありますけど、あれは使うと一瞬で「HDRくさいなぁ」とバレてしまうといいますか、HDR写真という一つのジャンルになってしまっています。肉眼で実際の風景やなんかを見た時と同じように暗いところから明るいところまでを一枚の写真に表現するんですが、逆に不自然になっちゃうんですよね。だから飛び道具として考えたほうが良いですよ。

写真って、ここからここまで、って制限がある中に上手く自分の見せたいものを押し込める技術っていうのが大事でして、それは画角的にもそうですし、露出的にもそうです。露出って、どれだけの明るさで? っていう事なんですけど、要はどれだけ暗いところからどれだけ明るいところまで写真に納めるのか、って自分で決めるって事ですからね。

RX100はコンデジにしてはセンサーが大きいのですが、とはいえ1インチ。ミラーレス機や一眼レフに張り合えるくらい画質が良いんですが、どうしてもダイナミックレンジは狭くなっています。

一番顕著に出るのが明るい側、つまり白飛びしやすいんですね。

20150304-_DSC2843

うちの近所の駐車場に猫が住み着いていまして、暖かい日はこういう風に撮らせてくれます。
注目してもらいたいのは、猫の手! 白飛びしてますよね。ぶっ飛んでます。データがない状態。

これ、私の場合普段からRAWで撮っているんですけど、Lightroomへ取り込んでから暗くしてみても、完全に白飛びしているところは階調ゼロなので取り返しがつきません。

20150304-_DSC2843-2
ね。べたっと白塗りされたまま暗くなっているでしょ。これEV5段分暗くしているんですけど、猫の白い毛のふさふさ感が皆無でしょ。これじゃあちょっとアレだなぁと思うわけです。階調に乏しい写真は、なんか貧乏くさいんですよ。

撮っている段階では猫の体が車の影に入っているので、「ああある程度明るく撮らないと暗い写真になっちゃうよなー」と怯えて明るく撮ってしまいがちです。カメラも何かしらの露出オートの場合、こういうシチュエーションだと暗い側に露出を合わせて明るめに、というか猫を適正に撮ろうとしますよね。

それをグッとこらえて、あえて暗めに撮っておくんです。こんな感じ。

20150304-_DSC2845

暗めといっても、猫の手が白飛びするかどうかのギリギリのところまで明るく撮っています。実際の設定はPモードで-0.7EVだったかな。
で、頭側が暗いので、家に帰って来てからLightroomに取り込んで「シャドー」を持ち上げてやります。

20150304-_DSC2845-2

別にLightroomでなくってメーカー純正の現像ソフトでも、Photoshopでも良いんですが、RX100のRAWの場合、JPEGの8bitと違って12bitあるので多少暗いところを持ち上げる分にはノイズなくグッと明るくなってくれます。この画像ではシャドーを30くらい持ち上げていますが、ザラザラ感は特に出ていませんよね。

そして手にはちゃんと階調が残ってふわふわした毛の表現がしっかり出来ています。白飛びさせない作戦、成功です。

人物を撮ったポートレート写真でも、照明が当たっている側が階調ゼロになっちゃってるような写真をよく目にするんですが、階調に乏しい=貧しい写真と思って間違いありません。どれだけコントラストが高い写真といっても、暗いところから明るいところまで豊かに階調を記録するっていうのが写真技術の大事なところなんです。実際、この猫の作例で見比べてみても、手が白飛びしてしまっているのとちゃんと階調が残っているので比べると、階調が残っている方がリッチに見えますよね。

デジタルの場合、安全に撮ろうってよく言いますけど、露出に関して安全に撮るっていうのはこういう事を指します。わざわざRAWで撮るっていうのはこういう面で有利だからなんです。まぁRAWが有利なのって他にも色々ありますから、その一端です、っていうくらいの表現にしておいた方が正しいかもしれません。

というわけで、せっかくRX100はRAWデータがちゃんと使えるレベルのものですから、機会があればRAW現像も試してみて下さいね。

7 Responses to “RX100は白飛びしやすい

  • お世話になっております。

    私もよく、RX100の露出を1/3から2/3くらいアンダー目に撮ります。
    それでも暗い側の諧調はかなり豊かに残るような印象ですよね。
    そこで個人的に俄然欲しくなるのが露出専用ダイアル、です。
    もともとPowerShot育ち、というのもあるかもしれません。
    RX100のターゲットを考えると、むしろお荷物なんでしょうね。
    実際には十字キーの下に露出を割り当ててます。

    先日散歩で、夕日の当たる古い作業現場を露出変えながら10枚くらい撮ったのですが、
    肉眼で視ると夕日の直射と逆光になった小屋の影の資材なんかが同時に視えて、
    人間の目ってむしろ凄いんだなぁと関心してしまいました。

    • >greenfiddlerさん
       そうそう、私も写真教室の生徒さんによく話すんですけど、写真をやってカメラのダイナミックレンジを知って初めて「人間の目ってすごいんだなぁ」って思うんですよね。
       輝度比でどれくらいあるのか分からないですけど、とにかく我々の目は炎天下でもシャドー側の階調がきっちり分かりますし、そうそう白飛びして見える事もありません。
       写真つうのは、その自然界の巨大なダイナミックレンジをどうやって写真のダイナミックレンジに封じ込めるか、その通訳方法を知るのが一番手っ取り早く露出マスターになる方法ですね。

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