露出補正
勢いに乗って露出補正の記事もアップしてしまいましょう。
露出とは
露出というのは写真の明るさの事。同じものを同じシチュエーションで撮っていても、明るさを変えるだけで写真の印象はがらっと変わります。
写真の世界には「適正露出」という概念がありまして、白いものがちゃんと白いか? 黒いものがちゃんと黒く撮れているか? メインの被写体は肉眼で見た時の印象に近く撮れているか? っていうのが基本的な考え方なんです。
また、突き詰めてやっていくと、写真の中の極端に明るいもの、極端に暗いものの処理はちゃんと出来ているか? コントラストをどうコントロールするか? などなど、写真の明るさのコントロールをカメラ側からもライティング側からもあれこれ手を入れて行かざるを得なくなってくるほど、露出、すなわち写真の明るさに関わる事というのは重要であります。実際、写真の要素なんて、大きく分けると構図に関わる部分と露出に関わる部分に二分できちゃいますからね。
一眼レフなんかだとカメラを直接コントロールして絞り、シャッタースピード、感度というのをコントロールし易いんですが、RX100の場合はちょこまかとボタンを押して変更しないといけないので、けっこうめんどくさいです。またカメラがオートで「こんなもんの明るさで撮ればいいんじゃないの?」と勝手に出してくれる露出(=自動露出=Auto Exposure=AE)の提案が非常に優秀でして、そうそう「うわ、ぜんぜん話になりませんよ」っていう外れ方はしません。
ただ、露出をコントロールが出来る、その方法を知っているに越した事はないので、今日はちょっくら自室で作例を撮ってみました。これを打ち込んでいるパソコンから歩いて2歩の距離のところに、ちょちょっと撮影セットを組んで撮ったものです。
露出補正
そうそう、露出補正というワードについて説明しておかないといけないですよね。
前述のとおり露出とは、写真の明るさ。それを撮る人の意思によって変更する、補正をかけるのを、露出補正といいます。
これは基本的にカメラ側が「こんな明るさの写真にしようと思うんだけど、どう?」という提案をしてくれる自動露出、つまりカメラが自動で露出を決定してくれるモードを使う際に使われる言葉です。
ですので、このブログ内でも露出補正といったら、PとかAとかSのように、カメラが自動で露出を決めてくれるモードを使っていて、そのカメラが「どうでっしゃろ」と提示してきた写真の明るさに対して「もっと明るく! もっと暗く!」と補正の指示をする事を指します。
RX100での露出補正のやりかた
AとかPとかSとかのモードで、カーソルを下方向に押します。
カーソルの下に、プラスとマイナスが合わさったようなマークがあるでしょ。それはどのメーカーのカメラでも、まず間違いなく露出補正を意味しています。大変分かりやすいであります。
カーソルを下に押すと、こういう画面が出てくると思います。
はい。画面表示のモードによってはもうちょっと違う形のメーターが出てくる場合もありますが、プラスマイナスいくつ、と数値で明るくしたり暗くするのは一緒。
明るくしたいときはプラスいくつ、という方向にダイヤルをぐりぐり回してやればOKです。逆に暗くしたいなら以下略。
自動露出カメラの至らないところ
最近のカメラのAE、自動露出ってむちゃくちゃ優秀なのですが、まだまだ苦手なものもあります。
それは何かというと、カメラにとっては明るいものと白いものは一緒、黒いものと暗いものも一緒っていうところです。
これ原理について云々するのは避けますが、要は反射率によってカメラは「どれくらいの明るさで撮れば良いのかな」って考えるので、実際白いものも明るいものも、レンズの奥まで光がバーっと多く飛んでくるという意味では同じなんですよね。
ですから、白いものや黒いものがバックになっている時や、逆光になっている時になにか撮ると、自分の意図している明るさではなかったり、肉眼で見たのと大きくかけはなれているなーと思われる事が多いんじゃないでしょうか。
そういう時は露出補正ですね。露出補正がない時代の自動露出フィルムカメラの場合は、逆光の時にだけ押す「逆光補正ボタン」というのがあったりしました。まぁ他にもフィルムの感度を偽装したりするテクニックもあったんですけど、その辺りは余談ですね。
いじわるな実例
そういうわけで、ちょっとカメラに意地悪なシチュエーションをわざわざ作った上で作例を撮ってみました。
被写体はCarl Zeiss Tessar 2.8/50といってちょっとレトロなレンズ。この際被写体が何であるかは結構どうでも良いんですけどね。大事なのは背景によってカメラが受ける影響です。
結論から言うと、白い背景と黒い背景だと写真の全体の明るさがむちゃくちゃに変わってしまうんですよ。見てもらうとすぐ分かるんじゃないでしょうか。
白い背景と黒い背景で、カメラは感度をISO125、絞りをF3.5に固定した状態で、あとはRX100さん、あなたが適正だと思う明るさに撮ってみてください、とシャッターボタンを押してみました。
結果はこんな感じ!
この2枚の写真、真っ黒な紙と真っ白な紙の上に同じレンズを置いて撮っているんですが、結果としての写真からは背景の明るさの違いがぜんぜん分からないですよね。
なんでかというと、カメラって白いものも黒いものも、中庸のグレーで撮ろうとするのです。
深く考えなければ、別にそれでいいじゃーんと思うかもしれないのですが、メインの被写体として一応置いてあるレンズの明るさが全然違ってしまっているのがいただけません。本当はどちらの背景とも、レンズだけは同じ明るさで写らなければならないんです。
これね、カメラまかせで撮るのに慣れてしまっている人だと、もう脳がそれに慣れてしまっていて「写真に撮るんだから、こんなもんでしょ?」って悪い先入観で写真をとらえてしまうのですが、今日はその呪縛も解きましょう。
適正露出って
露出補正を何故するかといえば、カメラが提示してきた露出、すなわち写真の明るさが自分の肉眼で見た印象と違うから、つまり「適正でない」からですよね。
もちろん表現の意図として、肉眼で見ているとすごく明るいのだけど写真の上では真っ暗に写したいとか、そういう表現も当然ありうるのですが、基本的に露出というのは肉眼で見た明るさに近い露出にするのが正解です。そこをベースにスタートしないと話が始まらないというのは、論をまたないところだと思います。
人間の脳というのは非常に優秀でして、白いものはちょっと暗くても白く見えてしまいますし、黒いものはちょっと明るくてグレーがかっていても「黒いなー」って変換してしまうものなんです。
なので、写真として撮る際もまずは白が白、黒が黒、そしてメインの被写体が肉眼で見た時の明るさに可能な限り近くなるように写るのがベストです。
そう考えると、上記の2例の場合は黒背景の時、カメラが明るく取り過ぎてしまってレンズも一緒に明るくなってしまっていますし、白い背景の時はカメラが暗く撮ってしまっているのでレンズも一緒にドローンと暗くうつってしまっています。これではいけませんと。実際、撮っている私としても両者とも肉眼で見た印象とはかけはなれているので、ここはひとつカメラに言う事を聞かせて補正してやらなきゃなりません。
黒い方
というわけで、さっきの作例で黒い背景の方が先に挙がっていたので、まずは黒い方の背景で露出補正してみましょう。
再度、露出補正ゼロから。
黒背景っていうかグレーになっちゃってますね。これはつまり明るすぎるという事なので、露出補正をマイナス方向にかましてやりましょう。
0.7というのは0.7EVの略でして、写真の世界では明るさの値としてEVというのを使います。でも知らなくてもRX100を扱う分には全く問題ありませんからご心配なく。
もうちょっと暗くても良いんじゃないの? というわけで、さらに暗く補正しましょう。
黒い背景、黒いレンズがしっかり黒くなってきましたね。いちおう露出補正の限界の-2.0まで撮ってみましょう。
カメラによって露出補正の限界は決まっています。RX100はプラスマイナス2EVまで露出補正が可能なので、これが限界です。
どうでしょう、最初の露出補正ゼロの状態から比較すると、ずいぶん黒が黒らしく落ち着きましたよね。私の肉眼で見た感覚からすると-1.3が一番それに近いので、-1.3で補正したものを採用する事にします。
白い背景
次に白背景で見てみましょう。
今度は黒背景の時とは逆で、RX100は「こんなに明るいわけないもんなー。ちょっと暗く撮りますよ」という感じで暗くしてしまいます。
これはRX100だから、コンデジだからという事はなく、今までに製造されたどの自動露出カメラもほぼ同じ反応をしてしまうものなので仕方がないんです。
まずは露出補正ゼロ。
うわっ、暗っ! と私は思います。白が全然白じゃありませんね。というわけでプラスにプラスに露出補正していきましょう。
まだだ、まだ終わらんよ。だってまだ白の筈の背景がグレーだもの。
うーん、まだ完全に白とは言えないですね。さらにプラス補正。
もうちょっとプラス補正しても良いような気もしますが、これ以上やるとちょっとビカビカしてお下品になってしまいそうなので、背景は多少グレーっぽい気もしますがこんなもんで勘弁しといたろうという気分です。というわけで白背景の方は+2.0を採用。
比較!
さあまず白黒それぞれの背景で撮ったものを、露出補正ゼロのもの同士で比較してみましょ。
オウフ……なんかきったない感じですね。そもそも構図が適当だという話もありますが、その辺りは勘弁したってください。
それにしても2つの写真のレンズの明るさの違い! 同じものとは思えませんね。もちろん光源は全く動かしていないですし、光の強さも変えていないんですよ。単にRX100の「こう思いますよー」という明るさに任せて撮った結果です。
じゃあ次に露出補正をして撮ったもの同士を比較してみましょう。
どうですお客さん! もっとギリギリまで黒を黒、白を白にしても良いですが、ゆる目にやっても十分伝わりますよね。何よりレンズの明るさがほぼ一緒に見えるので、その辺り大変よろしいんじゃないでしょうか。
というわけで
今日のお題、露出補正だけで写真の印象ががらっと変わるからやってみると良いですよ、というのはきっと皆さんに伝わったんではないかと思います。
RX100の自動露出、わたしもPモードで撮っているくらいなので大体のシチュエーションでかなり正確に叩きだしてきます。それはそれはもうなんていうんでしょうか、10年前のカメラと比べると驚くべき進歩であります。
ただ、カメラ全般が苦手にするシチュエーションというのも確かにありますから、そういう際は露出補正して言う事を聞かせてやるのが吉。
すべてRX100様のおっしゃる通りに……というRX100教の信者みたいになるのも全然アリだと思いますけどね。
また同時に、カメラで撮ると黒いものは勝手に明るくなっちゃうんだよね、そういうもんなんだよね、と諦めの境地みたいになっている人の脳をゆさぶる事も出来たのではと思います。こういうのは撮っただけ、チャレンジしただけ、後からネチネチ検証しただけ上手くなりますから、是非RX100が壊れるまで撮り倒してやってください。
いつもYoutubeで楽しませて&学ばせてもらってまーす。
露出補正についてググると、そこにも伴さんがw
非常にわかりやすい説明ありがとうございます。
富士使いの者(X-E2,X-H1)ですが、やはりRX100初代はいいですね~,気兼ねなく撮れる1台として。
RX0m2も捨てがたいけど。