真面目なRX10レビュー

こんばんは。最近あちこちに持ち歩いて使っていたDSC-RX10、「こういうカメラなんだな」というのがよく分かりましたのでレビュー記事にまとめようと思います。

結論からいいますと、当初の予想どおり、非常にオールマイティーで面白いカメラ! すべてが優秀なので、ものすごい画質が必要だったり、よほどの望遠やよほどの動体追尾性能が必要なジャンル以外においてはもう仕事で使えちゃうクオリティーの写真が撮れます。実際わたくし仕事の撮影でも一部使ったりしていますが、一眼レフの写真に混ぜても分かりません。

たとえばライターさんとか、取材をするついでに写真を撮らなきゃならないような、しかも小物や食べ物みたいに多少ブツを撮らなきゃなんないような人の場合、RX10が費用対効果抜群です。換算200mmの望遠があって、すごく寄れて(望遠時0.48倍)、なおかつ外部ストロボが使えちゃいますからね。

実際の作例と一緒に見て頂きましょう。

撮り逃げスナップカメラとして

まずはスナップ。

これ取り逃げ系のストリートスナップカメラとして考えた時、という話なんですが、シャッター音がしない上にEVFが付いているわ、液晶が稼働式だわ、カメラのボディーが小さいのでカメラを持つフォームの自由度が高いわで自由自在に撮れます。AFも非常に優秀。手ぶれ補正も利きまくり。逆光にも可愛げがないくらい強い! さすがは我がカール・ツァイス、Tスターコーティング!

ちなみにTスターコーティングのレンズはPLフィルターの効きが悪いってContaxの時代から言われているようですが、本当に効きが悪いので、私ツァイスのレンズばかり使うようになって以来、ぜんぜん使わなくなっちゃいました。他社のレンズの場合はよく効くので、以前はちょくちょく使ったものですが。

以下の写真、設定はぜんぶP(プログラムAE)で撮っている筈。RAWで撮ってLightroomに持って行ってからモノクロ現像しているのでJPG撮りっぱなしの画質とは違いますが、このカメラがどれくらいのポテンシャルを持っているのか、どれくらい「使える」RAWデータが記録できるのか、を重視するので撮って出しJPGの良し悪しにはまったく触れません。

広角が24mmから使えるので、「おっ! あれ撮りたい!」と思って電源を入れていきなり撮ると24mmの超広角です。個人的には28mmか35mmを多様するので「うわっ、ひろっ」って驚くんですが、慣れてしまうとこれはこれでスケールの大きな写真になるのでアリですね。1枚目と4枚目が24mm相当の画角の筈です。2、5枚めが35mm相当の画角に固定して撮っています。

まー便利! 楽! 軽いからカメラを持って歩きまわっても疲れません。大量に撮れちゃいます。ただ唯一の難点として、このセンサーはRX100の初期型センサーと比べると高感度に強いんですが、階調も輪郭もスムーズなので、ガリガリ系の現像をしても下品になってくれません。どうしても上品な感じの写りになっちゃうんですね。

なので、RAW現像を前提に撮るにしても、バキバキ、ざらざらで汚す感じの写真より、スムーズで質感のあるモノクロを目指した方が結果が良いようです。

 

都市景観を撮るカメラとして

ガラス、金属、コンクリート、整然と並ぶ人工的な風景と、そこに点在する人々。
そういう被写体を撮らせるとRX10、非常に向いているなぁと思います。

元のRAWデータは、シャープネスきりきりなデータではないんですが、Lightroomでいう「ディテール」のパネルでパラメーターを細かく突き詰めてセッティングを出していくと、シャープネスを上げて行ってもノイズが増えにくい不思議な性質のRAWデータなので、現像の段階でシャープネスをそこそこ(Lightroomで70くらい)上げてしまっても問題ない感じです。RX100初代の場合は低感度で撮っていてもシャープネス50程度でちょうど良い雰囲気、それ以上やるとノイズが気になる感じなので、根本的に違うものなんだなというのが実感できます。

またトーンについてもRX100との比較になっちゃいますが、RX100初代はシャドー側がリッチ。ハイライトがプアなんです。非常にすぐ白飛びします。だからシャドーの中で階調を表現するような撮り方が向いています(飽くまで個人の意見なんですけどね)。シャドーぎっとり、潰れそう……でも潰れないみたいなのが得意なんですな。

でもRX10(RX100M2と同世代)のセンサーはハイライト側がけっこう粘るんです。といいますか、どこがリッチもどこがプアもなく、全域にわたってリニアな感じです。めちゃくちゃスムーズで優秀なんです。

ただ、この全域にわたってスムーズなのってパッと見ると特徴のない、ぬるーっとした画質に見えてしまうので、例えば人肌を撮った時に「なーんか抜けが悪いな」って思えてしまったりするんですね。バイクや車のエンジン特性みたいなものなんですよ、これって。

この特性が一番活きるのは、都市の景観! と個人的に思います。
金属やガラスに反射した光を撮ったりすると、「あーなんだか気持ちが良いな」っていう写真が撮れます。あとRAWの段階ですでにレンズ補正が効いているようで、直線はスパっと直線に撮れます。これがまた気持ち良い。その辺りも含めて、オーガニックな被写体よりアーティフィシャルな被写体に向いています。

実用上の注意点としては、F4.0を超えると絞りボケが徐々に始まるっぽいので、あまり明るいところで撮る時は内蔵NDフィルターをONにしてでも絞り過ぎを回避するほうが吉です。ちなみに↑この作例も全部Pで撮っている筈。絞りは明るい日の写真だとF5.6まで行ってしまっているものがありますが(3、6枚目)、RAWデータを見てみるとF4くらいで撮っときゃ良かったなー、という感想を持ちました。このブログでの表示だと変わりないレベルですけどね。

ネイチャーカメラとしてのRX10

望遠が長い! 寄れる! っていう2点が非常に有効です。

よほどの高画質が必要な場合を除いて、何を撮るにしてもこのカメラでOKなんじゃないかなぁ。

そりゃ私自身はより高画質なカメラの存在を知っていますし、色んなレンズで遊ぶ罪深い道楽を知っているので、より良く撮ろうと思えば撮れるんですが、画質を追求するのが目的ではなくって、「きちんと撮れてくれていればOK」っていう方も世の中には多いわけですよ。

あと旅行カメラとしての性能ね! 旅行カメラって、意外と望遠側をよく使うようなので、たとえば一眼レフ用だとF値が変わってしまう便利ズームがよく売れるそうなんですよ。そんなん買うくらいなら、どうせレンズ交換をしないのが前提でカメラを買っているんだから、より画質で有利な一体型にしちゃえば? って思うんですよね。

ほら全然イケるでしょ! 1,2,4枚目が望遠端で撮っています。2,4枚目が望遠端の上に最短距離で撮影しています。

なんかこう、十分じゃないですか? RAW現像段階で、ハイライト側をちょっと押し上げて、よりパリッとした感じに見えるようにしていますが、撮ったままの状態でもそうめちゃくちゃ変わりません。5枚目の土の表現なんで、大したもんですよ。

ストロボが使えるRX10

外部ストロボで撮る時も、RX10ってバリバリに使えます。

フルサイズと比べるとセンサーが小さいので、被写界深度が稼ぎたい撮影の時に最適。
あと、実際に自分で試しましたけどレンズシャッター(なのか、電子シャッターなのか分からんですが)なのでストロボに全速同調します。最後の写真はシャッタースピードが1/1000sですからね。部屋の定常光を完全にカットして、背景をストーンと落とすのに非常に便利です。ほんとうは日中シンクロする時により便利さを実感できるんでしょうけどね。

1枚目はいつもお世話になっているテンカトルの漢人さん。比較的大きな面光源を作って影のないライティングをしてみましょ、って撮りました。一眼レフで撮ったって言われても「そうなんだ」ってばれないと思います。これ凄いことですよ。あと個人的にRX100は自然光というかその場の明かりでしか撮った事がなかったので、ストロボでも撮れるっていうのが新鮮で、一人で喜んであれこれ撮ってしまいました。

5枚目の石膏像は、全高4センチくらいのもので、クリップオンのストロボをリモートで光らせています。特にディフューズもへったくれもなく、左手前と右奥からの2灯。F8.0、1/1000s、ISO80。ストロボが最少発光でもまだ露出オーバーだったので、泣く泣く絞っていますが、NDフィルターをオンにすればもうちょっと絞らずに済んだなと後から思い返しちゃいました。

これも、一眼レフで撮ったって言われたとして「ふーん、そうなんだ」ってバレないと思います。いやはや大したもんです。

総括

というわけで、やっぱりオールマイティーで便利、そして面白いカメラであります。色々撮る必要があるんだけど一眼レフやなんかには興味ないんだよね、という方がいらしたら、是非RX10のことを思い出して下さい。下手をしたら前述のとおり、「あなたは一眼レフを買わなくても良いんじゃないの?」という方も世の中にはけっこういらっしゃるもんですから、そういう向きに力強くプッシュできるカメラであります。

RX100はRX100で、あのサイズっていう恐ろしいほど強力な武器があるんですが、レンズの容積に余裕のある、その分画質が上積みされて色々便利なカメラっていうRX10の立ち位置も、使う人によっては有効だと思います。

それでは、また!

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  • そもそもRX100はどういう使い方をすると最高なのか | Sony DSC-RX100だけで撮るブログ :

    […] このブログではRX100M1、つまり最初に出た初期型を筆者が愛用しているもんですからそれで撮った写真をメインに、あとはRX100M4の機能解説本を書かせてもらった関係でお借りしていたM4の写真がちょこっと。あとは動画用に買ったRX10(後述)で撮った写真もちょこっと使っていますが、何がどう違うって聞かれたとき、無理やり一言で各機種を表すのが以下の通りです。 […]

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