HDRの話
こんばんは。珍しく合間を開けずに投稿します。きょうはHDRの話!
今日は写真の作例を撮りに、品川水族館へ行ってきました。
水族館って、写真の撮りかた本みたいのを見るとけっこう取り上げられていますよね。パッと考え付くだけでも、写真を撮る人にとってはいくつもの障害があります。
暗いとか、暗い上に被写体が動くとか、我が子を水槽バックで撮りたいのにストロボ禁止とか。
基本的に、暗いもんはどうしようもないですし、暗いところでもガンガンにAFが合ってノイズがあんまり乗ってこないカメラっていうのは、センサーの大きなカメラです。正直RX100みたいなコンデジは、あんまり得意じゃありません。
それでも、上手いこと撮るところを選んでやれば、「おっ、いいじゃない」って写真が撮れないこともないんですよ。
めちゃくちゃ地味ですけど、面白い写真になったと思います。もちろんRX100で撮っています。他にも普通のスナップ写真を撮ったんですが、まあ普通すぎて別に面白くないのでパスしときますね。
さて、本題です!
今日はLightroomでやるHDRの話ですね。
ダイナミックレンジとは
ダイナミックレンジっていうのは、そのカメラが(センサーが)どれだけ暗いところから明るいところまで1枚の写真に収めることができるか、という性能を表します。
このダイナミックレンジっていう言葉はなにも写真に限って使われるものではなく、色んな業界で使われています。例えば音の世界でも、録音機材の性能を表すのに使われたりします。
えーと例を出しましょうか。モノクロの方が分かりやすいんですよ。
↑この写真を見てもらうと、写真の中の一番暗いところ、電柱の碍子の影とか、右側の建物の出窓の下側の影とか、そのあたりが一番暗いですよね。
そこと比べて、空を覆っている雲の明るい部分、これが一番明るいところですが、それらの間にどれくらいの明るさの差があるか? 撮影段階で、カメラのセンサーがどれだけの明るさの差を許容できるか? っていうのがダイナミックレンジです。これ写真を撮っていく上で非常に大切なんですよ。
ほら写真をちょっとやると、自分で露出を決定するっていうことを勉強するじゃないですか。
突き詰めて行くとその露出っていうのは、カメラによって決まっているダイナミックレンジの幅の定規を持って、「じゃあここからここまで写真に収めます」って指定するのと同じなんですよ。つまり、最初から写真として記録できる明るさの幅っていうのは決まっちゃっているので、現実に目の前に広がっている風景やなんかの明るさの幅がより広い場合には、「ここからここまで」って間を抜き取って写真にするしかないんです。
これ例えば、撮ろうとしている風景に順光で光が当たっている場合は、写る範囲のどこもかしこも明るさにめちゃくちゃな差がないので、そう深く考えなくても露出は決定できるんです。
ところが、逆光で撮ろうと思うと、明るい空と手前側の影の部分にめちゃくちゃな明るさの差が出来ちゃうでしょ。だから逆光の時は空を青く撮ろうとすると露出を暗めに決定するしかないので手前の影の部分は黒つぶれするし、手前の影の部分をそこそこ明るく撮ろうとすると、空の部分まで一緒に明るくなってしまうので白飛びしちゃうんです。
RX100+YA3フィルター。
↑たとえばこの写真は、全体的にどろーんと暗いんですが、露出は雲の一番明るいところがギリギリ白飛びしないように決めているので、手前の車なんかの部分は暗いですね。
この写真は逆に、花の向こうの空は逆光になっていて、花びらと比べると極端に明るいので、最初から白飛びしても仕方ないや、ってことで切り捨てて撮っています。
そういう風に切り捨ての発想をするのが、露出の決定の上では非常に大切です。むしろ、カメラのダイナミックレンジを理解しないとそういう考え方は出来ない=ダイナミックレンジが大体わかるということは、写真に変換したときにどうなるか予想しながら撮れるということ=写真的な文法が身についている、ということ。
ていう図式が成り立つので、露出がパっと決定できる人=けっこう撮れる人っていうことがいえるんであります。
ようやくHDR本題。
前項では、ダイナミックレンジっちゅうのがカメラによって決まってしまっているので、それに応じて撮ろうとすると、逆光なんかの場合、つまり一枚の写真の中で極端に明るいところと暗いところが出来る場合は、どちらかを活かしてどちらかに飛ぶか潰れるかしてもらうしかない、というお話をしました。
ところがですね、世の中にはわがままな人がいたもんで、「いや両方欲しい。ご飯を腹いっぱい食べてから、デザートも人並み以上に食いたい」みたいなことを言うわけです。
そこで発明されたのがHDRです。
よくHDRの謳い文句として、肉眼で見たように、とかって言うんですが、HDR写真っていうのは「ああHDRだね」っていうぎとぎと感にあふれていることが多く、たいがい不自然なので私はあんまりやりません。
ほらRX100にも、クリエイティブスタイルでしたっけ、JPG撮影の時にだけやってもらえる、色んな色調に加工して遊ぶ機能がありますよね。ピクチャーエフェクトですか。あれに「絵画調HDR」というのがあります。試してみた事、あります? 本当に絵画的な、よくも悪くも不自然なHDR写真が出来上がります。
これ明日にでも作例を撮ってきてアップしますね。
まあ見てもらうと一発でわかると思うんですが、普通に撮った場合は白飛び、黒つぶれが発生するような極端な明るさ違いの箇所を、無理くり一枚の写真に収めてくれます。だいたい3枚露出違いのを撮影して、カメラ内のコンピューターの力で合成するんですな。
LightroomでHDR
色んな方のやっている写真ブログを見て回っていると、その気持ち悪い系のHDRがむしろ好きで好きで、っておっしゃる方もチラホラ見受けられます。たしかに「うわーなんじゃこりゃ」って目を引くので、あれをぐいぐいやりたくなる気持ちは分かります。私もRX100のイラスト調に一時めちゃくちゃはまりましたしね。
ただ、極端なHDR写真って、一発で不自然さが分かってしまうのであんまり用途がないんです。実際、HDRって一時大流行したんですが、ここ2,3年は下火になっておりました。
が、なんでかLightroomにHDR合成機能が追加されたんです。LightroomがCCになった時なので、2015年ですか。今更感がちょっとあったんですが、試して納得。すごく使えるHDRだったんです。
実際にやってみましょうか。
実践LightroomでHDR。
まずは逆光の風景など、明るさが極端な被写体を選んで撮影します。
↑まず普通に1枚撮りました。ギリギリOKっちゃOKなんですが、左上、太陽があるあたりがちょっと白飛びしていますし、全体的に空の青が薄くなってしまっています。これをHDRでもっと良い感じにしてやろうと思います。
HDRは3枚の明るさの違う写真を合成する手法で、暗く撮った写真を明るい部分のパーツとして。また明るく撮った写真を暗い部分のパーツとして合成します。
合成します、といっても、Photoshopのレイヤーマスク機能なんかを使って自力で合成するのではなく、Lightroomが勝手に良い感じにやってくれますから心配は要りません。
撮影時はAEBを使うと良いでしょう。AEB=Auto Exposure Bracketing。カカカッと明るさの違う写真を3枚セットで撮ってくれる機能です。Sonyのカメラの場合、ドライブモード(連射するとかしないとか、タイマー撮影するとか決めるところ)にBRKっていう略語で載っています。
3枚連続撮影の、2EV違いで撮影っていう設定が一番手軽でおすすめです。「BRK C 2.0EV 3」っていう設定でOK。ちなみに私のカメラはRX100初代なので、連続ブラケティングは0.7EV違いでしか撮れません。今回この記事では、極端にやった方が分かりやすいのでRX10で撮った写真を使いました。
もちろんカメラを三脚にセットするのであれば、1枚1枚自分で露出補正して撮っても良いんですよ。それならRX100でもできます。露出補正なし、-2EV、+2EVって。でもこのLightroomでやるHDR、アルゴリズムが優れているので、気を付けて撮れば手持ちで撮った写真でもきれいに合成してくれちゃいます。今回はそっちで行きました。
ちなみに明るさを変えて3枚撮る際、一番大事なのは、暗く撮った写真の一番明るいところが白飛びしないで写っているように露出を決めること。そうしないと意味がないですからね。
撮れましたか? 撮れましたね?
では、その写真をLightroomに取り込んでみましょう。
取り込んだらグリッド表示にします。キーボードのGを押すと一発でグリッドモードになります。
そこでHDR処理する写真3枚を選択して、Ctrol + Hを押すか、右クリックしてコンテクストメニューからHDRを選びます。
↑こんな感じ。するとプログレス表示が出ます↓
パソコンのスペックやカメラの解像度にもよるんですが、そう時間はかかりません。しばらくするとHDRダイアログが出て、ちょちょっと設定ができます。
↑一応ちょこちょこ出来るんですが、私はいつも「そのままGoでお願いします」つってむつかしいことは考えず、とりあえず合成してもらいます。ゴースト除去量とか使ったことがないんですが、これはたぶん3枚の写真の差異が揺れた木の枝なんかで出た時に、どれくらい消す? っていう機能なんでしょうね。自動整列オン、自動諧調オフにしています。
さあ、ちょっと待つと、こういう風にHDR画像がDNGファイルでできている筈です。あとは普通のRAW画像と同じように現像処理するだけ。
Lightroom HDRの素晴らしい点
LightroomのHDR結合が使いやすいのは、これ結合した写真がDNG形式になるので、HDR合成されたというより、本当にダイナミックレンジの広いRAW画像が出来たのと同じことなんですよ。
ダイナミックレンジが普通のRAWよりも広いので、ハイライトやシャドーをいじっても、また露光量を1EVくらい変更しても、まったく問題なく、むしろすごい利き方で思うようにいじることができます。
さっききになっていた左上の白飛び部分、は、ハイライトのパラメーターをガっと下げたらまったくもって安全ゾーンにまで暗くなってくれました。逆に、シャドー側が暗いと重たい印象なのでシャドーのパラメーターをぐいぐい上げてやって、全体を明るい印象に近づけています。
↑出来上がりはこんな感じです。白飛びせず、なおかつ暗くもなく、という撮った状況から考えると不思議な写真になっています。でも自然でしょ。
↑4枚並べると違いが一目瞭然ですよね。これがLightroomのHDRです。
↑もう一作例。これもRX10で撮りました。パイプの一番明るいところが白飛びせず、なおかつ谷間の深いところもきちんと見せたいというわがままをHDRで叶えています。
さいごに
写真って、そこら中の雑誌の表紙が、玄人が見ると一瞬でわかるほどレタッチしまくりだったりすることからもわかるように、結果としての写真が良ければ、後処理でもなんでもやってOKなんです。
ただ、やりすぎると「うわっ安っちい!」ってなるのが世の常ですし、たとえば報道の世界みたいに、後処理をすることがタブーの世界もあります。去年も大きな報道写真賞を取った写真が合成だったか何かで賞がはく奪されたニュースを聞きました。
ただ、用途によってはこういったHDR合成もぜんぜんアリだと思いますし、こういう遊びを取り入れることでダイナミックレンジを考えながら撮るきっかけになったら、それはそれで有益ですから、もしLightroomでRAW現像をしている方がいらしたら、ぜひ試してみてほしいと思います。
何より、RX100の数少ない弱点の一つが、フルサイズのセンサーと比べるとどうしてもダイナミックレンジが狭いことなんですが、このHDR合成をこそっと使うことによってそれが解決しちゃうんですね。
私自身、RX100(およびRX10)で撮る際は、 隠し味としてこれからも使うことがあるんじゃないかなと思っています。
この2枚も、RX100で撮ってHDR処理しています。こそ~っとやっているのでわかりづらいと思いますが、ギリギリのところで露出を詰めていった時に、最後に手助けになる事もありますよ、っていう感じですね。
それではまた!
私がデジカメにハマって4年くらいになるでしょうか…白とび黒つぶれを意識しなかった最初の頃のほうが、露出決定に関してもノビノビとやっていたように思います。ところが白とび黒つぶれを意識しだしたら、凝り固まってしまって自由な表現が出来なくなってしまうというか、ヒストグラムに惑わされるとでも申しましょうかー。ダイナミックレンジについても頭では分かっているのですが、少しでも白とびしている部分を見つけると、いまだに気になってしまいます^^;
HDRは仰る通り、わざとらしさが目に付いてしまうので、全く使っていませんでしたが、、、うーん、なるほど。非常に分かり易い説明ですね。RX100のDレンジオプティマイザーはなかなか優秀だと思うのですが、アレもHDRの一種と捉えて良いのでしょうかね。
一番引っ掛かっていた部分が氷解した気がします。有り難うございます!
>夢玉さん
こんにちは。
あー、露出の決定は、ヒストグラムで惑わされるっていうの、分かります。
私も撮っている段階では「ヒストグラムのこのへんに来る筈だから」って撮っておいて、意外とアンダーだったりっていうことがよくあります。本末転倒な気がしますが、とにかく安全に撮ろうとすると腰が引けてそうなっちゃいますよね。
RAWで撮ると、1/2EV程度は間違いなくリカバーできるので、ちょっと冒険ができるようなって良いっていう側面もあるんですよ。
HDRはやっぱり、ね……っていう。飛び道具感が強いですねw
DRO、ダイナミックレンジオプティマイザーは、撮影した写真のシャドー側だけ持ち上げるっていう機能なんですよ。なので弱いHDR的な効果が出ますが、HDRほど幅の広い露出差のものを合成するわけではないので、そこまで不自然にはならんですな。