網が邪魔? ぼかせば良いじゃない
絞りとか被写界深度って耳にされた事があるんじゃないでしょうか。それのいちばん初歩的で、なおかつ実践的なアレをアレしましょう。
「絞り」と「被写界深度」と「ボケ」って、3つとも絞りの機能を理解すれば「なーんだそんな事」ってレベルのものなんです。
実例を見てみましょう
こないだ近所のぶどう畑をチラッと撮らせてもらったんですけど、網越しになっていて手前の網がちょっと自己主張しすぎだなと。こんな感じ。
そこですかさず、RX100のモードをP(Program Auto Exposure=プログラム自動露出)からA(Aperture Value=絞り優先)に変えて、絞りを一番開いた状態にして撮ってやりました。カメラ任せだとF4.0だったのを、F1.8にしたんです。
ほーら手前の網がぼけてしまって、気にならなくなったでしょ。これが被写界深度のコントロールです。
手順を写真で
てな具合でございます。写真の状態だとレンズが望遠側いっぱいになっているので、一番小さくしてもF4.9までなんですけどね。
初期型とM2に関しては、広角側いっぱいにしてF1.8かそれに近くしないと、手前の網がぼけて気にならなくなるレベルまではピント位置の手前も向こうもぼけません。
被写界深度
1.被写界深度っていうのは、ピントが合っている前後の範囲のこと。
2.その被写界深度はレンズの焦点距離なんかでも変わるんだけど、一番変わるのは絞りの設定で。
3.絞りはFいくつ、という数値で表される。小さくすると被写界深度は浅く(狭く)なり、前後が大きくぼける。
てな感じです。要は最初の写真の状態だと、カメラがある程度絞りを絞った状態に設定しているので、ピント位置は向こうのぶどう(と思しき物が紙に包まれたもの)になのに、手前の網がけっこうはっきり写ってしまっていたんですな。
なので、絞りを開いてやる(Fいくつ、という数字を小さいものに変えてやる)事で、被写界深度を浅くして、ピント位置よりも向こうとこっちのものをぼかしてやりましたと。
飽くまでピントを合わせた位置ははっきり写るのが前提ですからね! どれだけ前後をぼかした写真でも、ピント位置ははっきり、が前提です。
卑怯なくらいぼかしてみると
一眼レフで写真を撮っている、特にいわゆる女の子の「ポートレート」というやつを撮っている日本人のおじさんたちは、このボケというのに固執します。それはもう情熱的にボケが、ボケがとのたまうわけです。あまりに日本人カメラマンがボケボケうるさいので、「bokeh」という形で英語に輸出されたくらいです。
ボケってそんなに大事? って写真をやらない人、またやり始めたばかりの人は感じると思うんですが、たしかに前後をぼかした写真って被写体を浮かび上がらせるので、強制的にメインの被写体に目が行くんですよね。だから構図のスキルが甘い人はそれに頼りがちです。
被写体の体のコントロールや背景の処理も含めて構図がしっかりとれる人が背景をぼかすというのをオプショナルに使うと非常に有効なんですが、ボケ一発で簡単に被写体を強調できると思ってそればっかり多用してしまう人が大変多いんであります。なんという手抜き。
ぼかすとどうなるか、RX100はちょっとボケの表現が苦手なので、一眼レフで思い切りぼかした写真と比較してみましょう。
もう卑怯なくらいぼけていますね、下の写真。これはもう構造上コンパクトデジカメってボケにくいようになっているので、ここまで大きなボケの写真が撮りたいのだったら、センサーの大きな一眼レフを使うしかありません。
逆にいえばRX100は大して絞らなくても容易に隅々まではっきり写す事ができるので楽、という見方もできるんです。一眼レフや中判、大判みたいに撮像素子が大きなカメラでの商品撮影や風景撮影の場合、もっとはっきりカッチリ写したいのに、ぼけちゃって困るなーでも光量が足りないしなーなんていう事もあるんですよ。だからボケない=劣っているというわけでは決してありません。
絞り優先
ふだんRX100で撮っている時、わたくしPモードで撮影しています。
なんでかっていうと、放っておいてもRX100は大体どんなシチュエーションでも最低限手ブレしないようなシャッタースピードを確保しながら、それに見合った絞りや感度を上手いこと提示してくれるからなんです。深く考えて撮るようなものを撮っていないとも言えますけどね。
でも、ごく稀に絞りやシャッタースピード、感度を撮る側の意図に合わせて変更したくなるんですよね。
そういう時に有効な手段のひとつが、このPからAへのモード切り替えです。Aは前述の通りAperture Value=絞り優先といって、絞りを撮影者が任意で設定して、それに合わせてカメラが残りのシャッタースピードと、オートの場合は感度も自動で考えて設定してくれます。便利便利。
どんな時にA?
絞りを優先にするのは、RX100が提示してくれる被写界深度が気に入らない時、ですね。
(実はPモードでも、いちど被写体に向けてシャッターボタンを半押ししてからダイヤルをぐりぐり回すと、Aモードと同じ事が出来るんですが、何かの拍子に設定が元に戻ってしまう事があるので、絞りを積極的にコントロールするのであればAにしちゃった方が賢明でしょう。)
ちょっと暗いところで撮っているからRX100は被写界深度を浅めにしようぜ、ってちっちゃめのF値を提示してくれるんだけど、全体をはっきり写したいから被写界深度は深めにしたい→F値おおきめでよろしく、みたいな考え方です。
逆に、被写界深度をもっと浅くしてぼかした表現がしたいんだよねーという場合も、これまたAモードにして被写界深度を積極的にコントロールします。
忘れちゃいけないのは、RX100が提示する「この明るさで撮りましょう、絞りとシャッタースピードと感度はこれで行きましょう」っていうのは飽くまで提案でしかないという事。最終的にはマスターであるあなたが最終的に「よし、これで行こう!」と決定して撮るものなので、露出補正や絞り値(F値)の変更は適宜して然るべきものですよ、というのを忘れないでください。
RX100を始めとする最近のカメラってむちゃくちゃスマートに決めてくれるので、かなりのレベルで押すだけOKになってきていますが、突き詰めようとするとまだまだ至りませんからね。
そもそも露出補正の話をしていませんでした
あれ? そういえば露出補正についてまだ解説していませんでしたね。次回は露出補正についてやりましょう。
今回はこんなところです。