RX100とRAW現像・モノクロ編
はい。ついに書くことにいたします。RX100とRAW現像・モノクロ編! ここでは、RX100で撮った写真のモノクロ現像を通じて何かを感じてもらえたらなと思っとります。
はじめに
わたくしが使用しているソフトはLightroom CC 2015です。ライトルームシーシーにせんじゅうご。最新版です。
ただ、きょうはRAW現像全般のお話をするので、特にLightroomに限ったお話ではないといいますか、Lightroomというソフトそのものの解説なんかから始めるとスペースがなくなってしまうので、今日はザクっと割愛いたします。
また、Lightroomの使い方についても、メーカーであるAdobeやなんかから腐るほど情報が出ているので、それも割愛! 多機能すぎてきりがないんです! 具体的な使い方を伴に聞きたいという方は、対面でやった方が間違いなく分かるのでビヨンド写真教室にお越しください!
今日皆さんにお伝えしたいのは、RAW現像は何を目的にしているのか? どう考えると上手いこと取り組めるのか? というコアの部分です。
なんでするのRAW現像
まず最初に、なんでRAW現像するの? っていう部分から考えてみましょう。
デジタル写真を始めると、周りで先に写真を始めている人から「RAW現像するといいよー、いいよー」、って言われますよね。
もちろん勧める人は、JPG撮影で終わっちゃうより何かしらのアドバンテージがRAW現像をすることで得られているからするわけです。
ところが、自分でRAW現像をやってみると、明るさを変えられたり、色味が変えられたりするのは分かるんだけど、それ以上何がどうなのか分からない! しかも操作が妙に複雑で、なにをどう考えたら良いのかも分からない。
↑こういう、分かりやすーいRAW現像の実例を見せられることはあっても、実際に自分の撮った写真で何をどうすりゃ良いのかっていうのは、いまいち分かりませんよね。
ここで詰まって、じゃあもうカメラが生成してくれるJPGで良いじゃないか、ってなる方が非常に多くいらっしゃいます。
私も実際、初めてRAW現像をやってみた時は、カメラ撮って出しのJPGよりもしょぼいRAW現像結果になったりして凹みました。いきなりは上手くいかないんです。仕方がありません。でも、世の中のことが大体なんでもそうであるように、RAW現像もネチネチやっているとある日、「これか! こういうことか!」って分かる日が来ます。
それを言語化するのが写真講師である私の仕事なもんですから、今日はRX100同好会の皆さんにそれをシェアしようと思っとります。
RAW現像の目的をしっかり考えてみよう
筋道を立てて行ってみましょう。
RAW現像、なんでするの? → 写真をより良くするため。
これは誰しも「そうだね」って頷かれることだと思います。良さ、っていうと漠然としていますが、「なんかよくわからんけども今の写真が良くないのは分かる。だからもうちょっと良くするためにいろいろと可能性を模索してみたい。」でRAW現像。そうです。私もそうやってRAW現像の道に入りました。間違っていませんよ。
写真が良くないのはなぜか? → 何かが間違っているからだ。
写真が良くないのは、良くない原因があるからです。
写真って面白いもんで、カメラ選び、被写体選び、シャッタースピード選び絞り選び、モデル撮影なら着ていく服選びなどなど、あらゆることの選択が写真に影響を及ぼします。アシスタントのコントロールなんかも写真の出来上がりに影響が出ます。選択の集積、それが写真です。ご両親の愛の結晶であるあなた、という表現に似ています。
色んなものの集大成で一枚の写真になっているので、最終結果としての写真がなんか良くないとしても、いちいち全部の要素を良くしていくっていうのは現実的に無理です。
でも、ある程度あとからリカバーできる要素もあるんですよね。
間違ったことを少しでも糺す方法はないか? → 撮影後の段階で編集できる手段があればいい
ここでRAW現像の出番です。RAW現像の目的がどういうものであるか、ざっくり考えてみましょう。
1.ちょっと失敗しちゃった写真を、見られる写真にする。
2.RAW現像するのを前提で撮ってきて、撮影段階での写真の良さをさらにブーストさせる目的でRAW現像を使う。
これです! この2つの目的がRAW現像には含まれているんです。
目的があやふやになりがちなRAW現像
さっき挙げた2つの目的、慣れてくると同時にこなせるようになるんですが、まずは1つ目の目的、「ちょっと失敗しちゃった写真を、見られる写真にする」っていうところからスタートすると捗ります。むしろ最初はそれだけ考えていればOKです。
失敗リカバー目的のRAW現像
失敗をリカバーといっても、RAW現像で出来る事は限られています。
まずは露出。写真の明るさですね。これは状況にもよりますが、±1EVくらいならリカバーできます。
もちろん露出を後から変える幅は小さければ小さいほど写真が不自然になりにくいので、撮影段階できっちり露出を狙って撮るのが大切ですが、ひとくちに露出のコントロールといっても全体を明るく、暗くするといった単純な処理だけではなく、たとえば暗いところだけ明るくするといったような複雑な処理も含まれます。
いわゆるコントラストの調整もこの一環といって良いでしょう。RAW現像ソフトには、あらゆる方向から露出をコントロールする手段が搭載されています。
あとはカラー写真の場合、色み、色合い、色の濃さなど、色に関わるところもかなりRAW現像段階で変えることができます。
私の場合は、現場で色をがっちり決めて撮るのは不可能と最初から諦めておりまして、家に帰ってからRAW現像段階で記憶してきた色に合わせる事にしています。
実際にちょっと見てみましょう
先日撮ったスーパーの階段を撮った写真を見てもらいましょう。もちろんカメラはRX100。モードはPで撮っています。露出補正もしなかったんじゃないかな。
カラー写真でやると色の問題が入ってきてしまうので、まずはシンプルにモノクロからやってみましょう。
モノクロは色がない、つまり真っ黒から真っ白までの明るさの変化だけで表現するので、写真のトーン(調子)というものを考えるのにとっつき易いんです。
↑撮ったままです。
撮った段階で考えていたのは、とにかく影と階段がかっこいい感じで調和するように、つまり構図がカッコ良い感じになるように、ということです。
また、RX100は白飛びしやすいので、階段の明るい部分が白飛びしないかな? と白飛び警告(ハイライト警告)がでないように気にしとりました。チカチカと警告が出たら露出補正をマイナスに振ればOKです。その辺りが分からない場合は、マニュアルを読んでみましょう。
さて、帰ってきてRAW現像することにします。Lightroomに取り込んで表示すると、↑この状態。
まずは単純にモノクロにしてみます。Lightroomの場合「V」を押すといきなりモノクロになります。
おっ、上品な感じで良いですね。
でもなんだかパンチが足りません。サムネイルで見た時点で「おっ、気合が入っとるな」というモノクロ写真にしたいので、もうちょっとあれこれしてみます。
まず、全体が明るすぎたのか? それとも暗すぎたのか? それを考えます。
私はさすがに大量に撮っているので写真を見て一発でわかりますが、最初はその写真にとって一番良い露出ってどれくらいだったんだろう? って分からないですよね。
露出補正をプラスに振るべきだったのか、それともマイナスに振るべきだったのか。
そういう時は、RAW現像段階でまずトータルの明るさを変えてみるんです。Lightroomの場合、「露光量」というパラメーターを動かします。
プラス1EVぶん明るくしたもの、プラス1EVぶん暗くしたもの。
恐ろしいことに、どちらも写真としてアリなので困っちゃいます。風景写真の場合、多少明るくても多少暗くても、どちらもアリになってしまう事がよくあります。
でも、最終的には「この明るさの写真が私にとって正解でした!」という露出に決定しなければなりません。
RAW現像をやると、その部分が非常に鍛えられるんです。
RAW現像は可能性を見せてくれるもの
カメラが決めてくれた明るさでばかり撮っていると、なかなか「自分は厳密にいうと、どの明るさで写真を撮りたいんだろう?」っていうのを考えるようになりません。自分としては厳密に決めているつもりでも、その幅がざっくりとしていて広いんです。
わたくし写真の露出をよくカレーの辛さで例えるんですが、自動露出で写真を撮るっていうのは、カレーの辛さを決める唐辛子の投入量を機械が勝手に決めてくれている、というのと同じです。多少辛くても、多少辛くなくても、それがカレーであることには変わりはないですし、食べた人も「まあカレーだよね」って一応は納得しますよね。
同じように、ちょこっと明るさを変えても、写真が完全に台無しになってしまったり、めっちゃくちゃに良い写真になったりする事はありません。だからカメラが露出を決めた写真ばかり見ていると、「本当にそうあるべき」露出っていうのがなかなか分からないんですね。これは露出補正をしながら写真を撮っていても、なっかなか身につかないんです。
でも、RAW現像段階で、自分で明るさを変えてみる経験を繰り返すと、「あれ? 撮っていた段階ではこの明るさでOKだと思っていたんだけど、実はもうちょっと明るい方が肉眼で見た印象により近かったな」なんていうことが起きるんです。
つまり、失敗をリカバーするため、というのが大きな目標ではあるんですが、RAW現像によって写真の持っていた違う可能性を見る事ができ、さらにその可能性の中から、「この」明るさにしよう、って決定するっていうプロセスを学び、また決定する目を養うことができるんです。そこが大事!
手段としてのRAW現像ではない
RAW現像がとっつき辛いのは、上記のような「こうあってほしい露出」や「この色が出てほしい」という出口をイメージしないまま取り組むからです。
逆にいうと、RAW現像をやっていると嫌でも最終決定しなくちゃならないですから、最初は一枚の写真に長い時間掛かりながら、あーでもない、こーでもないと繰り返してやっていくうちに、自分の中で指針が出来上がっていきます。「そうか、このシチュエーションではこの露出にするべきだったのか」という風に。
さらに進むと、撮る段階で「最終的にこういう表現にしたいから、撮影段階はこんな感じで撮っておこう」と最終的なイメージを頭に描きながら撮ることができるようになります。
RX100は白飛びしやすいからアンダー目に撮ってRAW現像段階でシャドーを持ち上げよう、っていう記事は、モロにそこの話です。
だからRAW現像のやり方そのものっていうのは、そんなもん無料で教えてくれるサイトがいくらでもあるんだから、いつでも学べるんですよ。大事なのはそこじゃないんです。
その写真にとってあるべき姿をイメージしながら撮る能力を鍛えるためのRAW現像、です。
マニュアルで露出が決定できるようになると、写真の抜けが良くなるってよく言いますよね。あれも実は同じことで、PモードやA、Sなんかのモードって結局はカメラが明るさを決めてくれているわけですよ。露出補正をしていても、それは相対的に「さっき撮ったのよりはもうちょっと明るい方がいいな」って考えていることがほとんどですよね。
ところがマニュアルモードMで撮ろうとすると、「俺はこの明るさがいいんだ!」って絶対的な指標で露出を決定するようになります。決定しないと撮れないですから。
たとえば空に浮かぶ白い雲がどれくらいの明るさで写っていて欲しいとか、モデルさんの額の一番明るいところがどれだけの明るさで写真に納まってくれていなければ困るとか、そういう風に厳密に決めるようになります。
モードがMだろうがAだろうが、最終的な露出が同じなら同じ露出の写真に当然なるんですが、マニュアルモードで撮ると明確に露出を決定する意図が介在するから、白いものがしっかり白く、黒いものがしっかり黒く露出で表現できるようになり、結果としてそれが抜けの良い、ぱきっとした写真に見えるようになるんですな。
それと同じことがRAW現像でも起きます。露出を決定する意思を鍛えるんです。
実際に、の続き。
さて、さっきの作例の続きをしましょう。
あの写真を見て、トータルでの明るさを上げたり下げたりしましたが、どっちもけっこうOKな感じになっちゃいましたよね。
それってつまり、あの写真がパンチのある写真に見えないのは、全体の露出が問題じゃないんだな、ということです。
じゃあどうするか? 今度はコントラストの問題なんですね。
コントラストっていうのは、その写真の暗いところと明るいところが、どれくらいかけ離れているか? っていう事です。
さっきの写真、暗いところも明るいところも、そう激しく差がありませんよね。被写体としては日陰の部分も日向の部分もあって、明るさの差が付いていそうなので、言い換えるとまあまあコントラストが高い被写体なんですが、撮影したカメラの側でコントラストが低かったので、なんとなくだるーんとした写真に見えています。
じゃあコントラストをグッと上げてみましょう。
パキっとしましたね。Lightroomでコントラストを+60まで持って行きました。大胆。
これ、コントラストを上げたっていうと分かり辛いですけど、一枚の写真の中の明るいところをより明るく、暗いところをより暗くしたって事なんです。
Lightroomに限らず、RAW現像ソフトやレタッチソフトには、こういう風に明るさやコントラストを変える手段が何種類も入っています。
もちろん目的によって使うツールを切り替えて挑むんですが、基本的な考え方はさっき述べたのと同じです。
この写真でいうなら、階段の日向のところはどれだけ明るければ良いのか? 日陰の部分はどれだけ暗ければ良いのか?
実はそれだけのことなんです。それさえ自分で決めてしまえば、あとは使いやすいツールを使ってそこにたどり着けば良いんです。
最後に、別の作例をさーっと現像してみましょう。
RX100にYA3フィルターをくっつけて撮った作例です。
撮った段階ではオレンジのフィルターをかましているので、オレンジ色に染まった世界になっています。
まずは単純にモノクロ変換。
↑モノクロ変換しました。
これ、元々けっこうコントラストが高い被写体ですね。じゃあアルミの椅子の明るい部分が白飛びするギリッギリの明るさになるまで持ち上げ、影の部分をちょっと黒つぶれするまで暗くしちゃいましょう。
↑微妙な違いですが、よりバキッと感が出ましたよね。
Lightroomで「白レベル」を+20、黒レベルを-30しています。
最後に、Lightroomのスペシャルな機能である「明瞭度」をプラスして、よりギスギスした感じにしましょう。
↑よりギスギスしてハードなモノクロ写真になりました。
明瞭度っていうのは、説明するのが難しいんですが、上げるとギスギスするちょっと特殊なエフェクトです。Lightroom固有の機能です。
RAW現像を始めると、こういう飛び道具的な機能を喜び勇んで使いたがるので、めちゃくちゃな写真になることが多いんですが、RAW現像の目的は飽くまで「自分のイメージする露出、色の具現化」ですからね。こういう機能は飽くまで隠し味として考えた方が良いでしょう。
何もバッキバキの写真だけじゃなくって、フィルムっぽい、ゆるーい現像もアリです。
最後に、いちおうカラーのRAW現像もアップしておきましょうか。
↑撮ってきた状態。
↑RAW現像で「撮った時のあの感動をアゲイン!」と調整したもの。撮った時点では、空が白飛びしないか心配で仕方がなかったので、ちょっとアンダー目に撮ったんですが、ちょっと暗く撮りすぎました。
Lightroomで「露光量+60、コントラスト+10、ハイライト-5、シャドウ+25、白レベル+55、黒レベル0、自然な彩度+15、彩度+3」で現像していますが、こういうパラメーター情報って別に役に立たないので気にしないで大丈夫です。
大事なのは、メインの被写体である桜が記憶に残っている良い感じの桜の色、明るさになっているか? っていうことです。そこを目指してあれこれいじくってみると、段々と経験が蓄積されて、そのうち自由自在に出来るようになります。
ということで
えらく長い記事になってしまいましたが、RAW現像をすべての解決手段としてとらえている方がけっこういらっしゃるので、「そうじゃないんだよ、RAW現像は露出を決定する力を鍛えるためのツールなんだ」と説くためにこの記事を作ってみました。
だってほら、どのみち他人が撮った写真を他人の環境でRAW現像して、それのパラメーターを教えてもらっても役に立たないんですよ。
写真雑誌に載っている、絞りいくつだのなんだのっていう情報も、わたし気にしたことがありません。
あとそうそう、RAW現像でリカバーできないものは、撮影段階でガチガチにやっておく必要があります。
それはピント合わせとブレ対策! 両者とも、後からはどうにもならないものですから、露出がちょびっとアンダーかも、とか、色の設定がちょっとおかしいな、てなことはRAW現像段階で調整することにして、ピントとブレの方に神経を集中して撮ってください。
というわけで、皆さんのRX100ライフがRAW現像をすることでより一層充実しますように!
非常に分かり易いですね。有り難うございます。諸先輩方でもRAW現像に対して肯定派、否定派がいまだにいますよね。私が教えを請うた人は「キャリブレーションが出来てないのにRAW現像しても意味がないし、面倒臭いから撮って出ししかしない。要は撮るまでの過程が楽しいので、撮ってしまえば興味の対象は別に移ってしまう」と言ってました。「その代わり、現場で思うような写真を撮る自信がある」と。
かたや別の先輩は「RAW現像することで自分の写真を見直す癖が付く。基本的にカメラが生成するJPGは信用していないから、必ずRAW現像する」と言ってました。
私も最初は撮って出しばかりでしたが、思うように撮れていないことが多いんですよね。最近はちょこまかとRAW現像するようになったのですが、やはり自分の写真を見直すきっかけにはなります。カメラの設定であくせくするよりも、構図に気を配ったほうがまだマシかなと。この機会にRAW現像をもっと勉強してみようと思います^^
>夢玉さん
お役に立てば何よりです!
撮影段階で何にどこまで気を配るかって配分は大切ですよね。
アシスタントを雇うと写真の質が上がるっていうのも、自分でやってできないことはないんだけど、作業を分担することでより集中しやすくなるっていう事の現れだと思います。
もちろん、RAW現像段階で見直す癖がつくのも大特典ですしね。
気が向いたらまた遊びに来てくださいね!