コンサートホール撮り・JPGとRAW、および更なる後処理の世界
こんばんは。
今日はご近所のコンサートホールへ音楽家の方の写真を撮りに行っていたので、ついでにホールの写真を撮らせてもらっていました。好きなんですよホールの写真。
左右対称で、こう傾斜があったり、椅子がぶわーっと並んでいて楽しいでしょ。
本編は一眼レフ+シフトレンズを先日アップした「ここまでやる事ないんじゃないの?」という三脚&雲台に載せて撮ったので、そのままカメラをRX100に交換して撮ってみました。このブログ用の作例に良いと思いましてね。この状態でした。
前にも書きましたけど、完全なオーバースペックですね。RX100の為だけだったら、もっとちっさい三脚を持って行きます。
さて、ホールというか形の整ったものを正確に撮らなきゃならない時のあれこれはそのうちまたTipsのページで云々する事にして、今日はカメラ内現像で吐き出されるJPGと、LightroomでRAW現像した写真にはどんな違いがあるのかしら? という話題です。
まずは撮って出し
まずはRX100で撮ってそのまま吐き出したJPGです。こんな感じ。
↑悪かーないんですが、ステージの明るいところと、客席や両サイドの壁との明るさの差があまりにきついので、ちょっと情報量が少ない写真になってしまっていますよね。
ほとんどの場合、カメラ内での現像をするとコントラストは高めにしてくれます。ただそれが合う時と合わない時があるんですよね。
明るいところと暗いところの差が大きい→じゃあHDRだ! ってやってみるとこんな感じになります。
HDR
いやこれ、極端すぎましたね。HDRって、運良く設定が当たれば良い感じになるのですが、なかなかこう……わざとらしくならない事が珍しいです。このわざとらしさ、HDRらしさを狙うのなら全然OKなんですが、HDRブーム初期の頃みたいに見る人にショックを与えるのが目的でない限り、今更もう、ね……という感じです。
ではどうするかっていうと、もう私の場合は常にRAWで撮っていますから、撮影現場では安全目に撮っておいて、帰ってきてRAWで上手い事コントラストをコントロールするという形を採ります。
撮ったまま、Lightroomに取り込んだ状態のRAWだとこんな感じ。何もしないでJPG変換しています。
RAW→Lightroomで素通しJPG書き出し
はい。何もしていないにも関わらず、白は飛ばず、暗いところもかなり持ち上がった状態になっています。
Lightroomというソフトは確かバージョン3だか4だかから、RAWを取り込んだ時点でハイライト側をぎゅっと押さえる処理をするようになりました。
LightroomにRAW画像を取り込んで表示すると、最初カメラ内現像されたJPGを表示しておいて、しばらくするとLightroomがRAWから演算したプレビュー画像を出してくれるんですが、そのギャップが結構大きいんですよね。
あと癖として、Canonのカメラで撮った写真だけかもしれないんですが、RAWを取り込むと1/3段分持ち上がってしまったり。その辺りはまた別の機会にやりましょう。このRAW画像に関しては、「LRに取り込んだ事によって、白いところが飛ばないように押さえられている」というのと同時に、「もともとRAWってコントラストが低い」という感じです。
もともとRAWデータはJPGみたいにコントラストを上げていないので、その場の明かりがカメラの性能、センサーの性能で捉えられただけ含まれています。
RX100の場合、ダイナミックレンジが何段分あるかというのは具体的に知りませんが、少なくともAPS-Cサイズやフルサイズの一眼レフ向けセンサーよりは狭いです。そりゃサイズが1インチですからね。でもハイ側、つまり明るい側がけっこう白飛びし易い以外は意外としっかり記録してくれるので、後からRAW現像でシャドーを持ち上げたりハイライト側を抑えたり、っていうのがやりやすいんです。
カメラによっては、「これJPGと何が違うの?」っていうRAWだったりする事もあるんですよ。そのあたりはRAWのビットレートが関係してくるんですが、そんなもん使う側からするとほとんど関係ありませんよね。要は扱いやすいかどうかです。RX100のRAWは扱いやすい、それだけです。
というわけで、上記のRAWの状態でもすでにかなり雰囲気があるのですが、そのまま出すのは釣ってきた魚をそのままお皿に乗せて「料理でござい」っていうのと同じ、なんだか気恥ずかしいもので、もうちょっと手を加えます。
RAW→Lightroomで現像
ね。RAW現像した感じの、綿密な感じの写真になっていますでしょ。
具体的には、ステージ上のお三方のドレスの色が、LRに取り込んだ状態だと白飛びギリギリで色がほとんどない状態だったので、ハイライトを押さえて「明るいんだけど色がしっかり出る明るさ」まで持って行きました。
と同時に、客席側は「別に客席が見せたいわけじゃないから、多少黒つぶれしても良いのでギリギリまで暗く」という考え方で暗くしています。
RAW現像した写真って何が良いかっていうと、写真の明るさの面だけ取り上げても、どこからどこまで写真の中に収めるかというのを明確に意思表示できるので、撮った人間の意思をダイレクトに見せる事ができるんです。結果として「おお、なんか写真らしい!」という印象に繋がります。
あと、そうやって「明るいところはどこまで明るく、暗いところはどこまで暗く」というのを積極的にコントロールするようになると、撮る時点でもどこからどこまでRAW画像に記録しておけば後から良い感じに処理できるか、という見当がつくようになるんですな。つまりは露出というものを考える良い機会になります。
ちなみにこの写真に関しては、元のRAWを撮影する時点で「ステージ上の真ん中の演奏家さんの膝あたりとステージのフロアが白飛びし易いから、そこをギリギリの明るさで撮っておけばシャドー側もLightroomでちょっと持ち上げられるに違いない」っていう目算で撮っています。結果としてはもちろん成功です。
次からはある種ちょっと卑怯な手段を使ってでも写真をかっこ良く見せたい、というステージ。
Photoshopで作品っぽく
RAWで撮ってLightroomである程度破綻のないように明るさを整えて、そこからPhotoshopへ持って行くとこんな感じに仕上げる事もできます。
えーっとレイヤーをコピーして「白黒」調整レイヤーをかまして、それをクリッピングマスクにしてコピーしたレイヤーにだけ掛かるようにして、さらに……とあれこれチマチマやっていますが、要約すると以下の通り。
1.彩度を落として、ちょっと退廃的な雰囲気に
2.ステージ上の明るさを押さえて、しっかり可視化
3.周辺の明るさも落として強制的にステージ上に目が行くようにしてしまえ
というような感じです。あと最後に処理が終わった段階でレイヤーを全部コピー→統合して、その統合したレイヤーにスマートシャープをかけたりしています。
Photoshopでの写真処理は、それだけで延々と書けてしまうので、そもまた要望が多ければ改めて! という感じですね。RX100でPhotoshopまで使う人はそうそういないと思いますし、私もあんまり使いません。
悪乗り
わたくし最近ハマりにハマっている、Nik CollectionのSilver Efex Proという画像処理ソフトを使うとこんなかんじに出来たりもします。
どうも扱いが難しいようでして、国内で使っているという方の話をほとんど聞いた事がないのですが、使いこなせたらこんなに楽しいソフトはありません。最近こればっかり使って遊んでいます。
これでの処理も、そのうち要望が募ればやりましょ。たぶん最初のLightroom現像の時点でつまづく方がかなり多いと思いますし、RAW現像がスムーズに出来るようになって初めてちゃんと露出が分かってくると思うので、そこまで生徒さんを育てるのが目標ってくらいの勢いですけどね。
そしてカメラ内現像のイラストモードに戻る
ここまでRAWで撮って後処理あーだこーだってやってきましたが、やっぱりRX100のイラストモードって、そういう後処理うんぬんを破壊するくらいのクレイジーさがあるモードなんですよね。
ここまでの俺の努力は一体何だったんだ、っていうくらい、イラストモードはイラストモードで完成された世界を持っています。
まとめます。
長くなったので無理やりまとめましょう。
問題の根本に立ち返ると、「なんでRAW現像するの?」という話ですよね。
それは結局、コントラストも含めた明るさを積極的にコントロールしたい、であったり、今回は触れませんでしたが色温度をちゃんとコントロールしたい、それからシャープネスをコントロールしたいという欲求から始まると思います。
逆にいえば、別にRX100が撮ってくれる写真そのままで満足なら、なーんもする必要はないわけです。だって最初からかなりきれいな写真を撮ってくれますからね。
でも、もしその先を求めるユーザーに対しても、RX100はしっかりとしたRAWデータを提供してくれるので、私みたいに細かい人間の「ああしたい、こうしたい」にけっこう応えてくれるカメラですよと。それが言いたいだけなんですね。
あとRAW現像そのもののスキル、テクニックはRX100でも一眼レフでも基本は同じですから、普段からRAWで撮って現像する癖をつけてしまうと、どんなカメラを扱った時にもそのカメラの限界性能がすぐに分かって便利ですよとか、いろんな利点があります。
今ならLightroom+Photoshopが月に1000円で使えますから、お酒とタバコをスパッとやめてRAW現像しましょう……つってみんながそんな修行僧みたいにRAW現像していたら不気味ですけどね。楽しくやりましょう。
それではまた!
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